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物づくりを通して
◆脳と身体は繋がっている
 「生きる力」「問題解決能力」…教育界に溢れる掛け声とは裏腹に、子どもたちはそんな力を発揮する学びとは程遠いところで生きています。「脳と身体は繋がっているんです」とは著名な昆虫学者であり脳解剖学者であった養老孟司さんの言葉。だけど、そういう示唆に富んだ言葉はなかなか子どもたちの耳には届きません。

◆物との対話
 教科書中心の座学で勉強した子どもたちの多くは数字と文字の無味乾燥な世界に生きています。記憶することが中心の勉強で、それで論理的思考力が増すわけでもなく、イメージ喚起能力が豊かになるわけでもありません。いや、かえって阻害されていることの方が多いかも知れません。まして、現実生活の対処能力など完全な未発達状態。りんごや梨も満足にむけず、ナイフやハサミや包丁もろくに使えず、ネジや釘、金槌やノコギリ…そういう道具とは無縁の物との対話のない世界に生きています。ボタンの操作一つで全てが可能だとでも言うかのように。でも、現実はゲームではありません。ボタン一つで放射能が消えるわけではないのです。
◆物をつくる喜び
 「フリースクール・ぱいでぃあ」が理念とする「フレネ教育」の創始者セレスタン・フレネは、
手仕事による「物との対話」を勧めました。物づくりを通した物との対話…頼りになるのは素手と材料と簡単な道具のみ。心は勝手に動きます。でも、物は自分の都合では動きません。物と対話しなければ物は何も答えてはくれません。物に聞き、物の性質を理解することから手仕事の作業は始まります。これが学びと仕事、スキルの原点です。

物づくりは人の活動の原点      
  物への働きかけを通して  
         物と対話し物事の理非を知る

ゴム粘土の蕎麦セット 物をつくる喜び ― 人間だから
それは心と身体の幸福な結びつき
知は工夫を招き、工夫は知を磨く
達成感を実感するのはこういう時
子どもには身体的理解が欠かせない
 
粘土や紙やダンボール、木や布を使った工作
ぶんぶん独楽、飛行機、ブーメラン、昇り竜、木工工作…
心に思い浮かぶイメージが形となって現れる

はさみ、彫刻刀、糸のこ、接着剤、カラーリング…
物に働きかけ、物の性質を知り、物と対話する
 それではじめて自分の心が形になる
蕎麦打ち体験