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不登校になった中学生のお子さんのいるご家庭のために 
■中学に進学してから不登校になった場合には、小学校時代からの持ち上がりの人もいれば、中学生になって初めて体験するお子さんもいることでしょう。
 小学生の時からの延長の場合には、不登校状態の継続ということで親御さんにもある程度納得済みということもあるでしょうが、中学生になったお子さんからいきなり告白された場合には、やはり大きな当惑を覚えられたことと思います。
 でも、もしかしてそれは親御さんが気付かなかっただけで、その萌芽は既に小学生時代からあったのかもしれませんね。実際のところ、そういう場合がとても多いです。当人も学校での生きづらさをもっと早くから感じていたのかも知れませんね。
 ですが、小学校時代には自分の言葉で説明できる子どもはまだほとんどいません。それに親思いの子どもほど親に心配をかける言葉は口にせず溜め込んで一人で頑張ってしまうものです。
 ですから、お子さんが「学校に行きたくない」と告白したことは、親御さんにとっては意外な言葉ではあっても、本人にとってはもうそれ以上は頑張れないぎりぎりの選択であることが多いのです。
 大人の場合には、どうしてもそれまでの自身の経験や常識で判断しがちです。そのために、本当にお子さんの気持ちを理解することが逆に難しくなることがあります。ともすると出来合いの知識や理屈でお子さんを理解した積りにもなりがちです。でも、それではお子さんの本当の気持ちは理解されないままとなります。

■学校を離れた子どもたちに一番必要なのは、単なる教科学習の支援ではなく、信頼できる大人や親からの受容の言動であったり、「今のままでも大丈夫だよ」という周りからの暗黙の承認であったりします。これは小学生、中学生を問いません。
 中学生の場合には、学校を離れてしまったことで(それが元々の原因ではないことも多いのですが)、結果的にそれが「学業不振」ということになり、学校の先生も、それ見て学校復帰を促すことが理解ある態度のように思いがちです。
 ですから、親御さんにとっては学校での勉強の遅れが大きな心配事になることはやむを得ないことです。また、本人に「学業での自信回復」させることによって、本人の自尊感情の育成にも繋がります。でも、それは単に早く学校に戻して遅れた学業を取り戻せば全てが解決ということにはなりません。
 「自分を生かさない学校からまず逃げろ!」とはよく言われますし、まさにその通りなのですが、やはりそのままでは本人は「負け犬」のような感情に支配されることになります。問題は、
「自分がより良く生きるために逃げる」ということの確認です。あの剣豪武蔵でさえも、無駄死にしないために、逃げに逃げたのです。

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ここでフリースクール・ぱいでぃあでの中学生に対する基本的な関わり方について触れておきます。

◆中学校での学習も、学校では教科書を使いますが、ぱいでぃあでは教科書の他により幅広く考えるための教材として、教科書以外の教材を活用することが多々あります。「勉強」というよりは「学習」という考え方がそこにあります。その場合に、本人に合った最適な教材を、本人の納得の上で、本人の意欲を引き出し、本人との共同作業で進めることがとても大事ことになります。
◆その一環として、中学生の段階からはインターネットの端末を活用した学習も積極的に取り入れて行きたいと思います。スマホかタブレットかパソコンがあれば、ある程度は自宅に居ながらにしての学習も可能になります。これらはあくまでも勉強の補助ツールに過ぎませんが、より広がりのある柔軟な学習が可能になると思います。

◆因みに、教科学習は無学年式を採用しています。学年相当分に問題のない子どもはその学年を、教科に苦手意識のある子どもの場合には躓いたところまで引き返して学びを組み立てることもあります。もちろん、教科学習の得意な子は先取り学習や飛び級をしたっていいんです。

◆また、教科学習よりも他の学びに重点を置きたい子の場合には、教科書とは違う学びの教材を用意し、自主的な学びをどんどん発展させて行くことも可能です。
 中学1年生  中学1年生になってから不登校になった場合、小学校最高学年から中学校最低学年への変化、学級担任制から教科担任制への変化に加え、小学校時代から感じていた学校での集団制への違和感が堤防が決壊するように我慢の限界に来たとか、精神的な変化によるとか、個人によって様々な事由が考えられます。
 本人はそのどれに最も近いかを確認することが必要です。そして、本人としては一番どうしたいと思っているかを、建前ではなく本音の部分をしっかり聞き取りましょう。ただし、それは非日常的な構えた形で、尋問調で行うのではなく、何気ない普段の会話の端々に感じられることが多くあります。
 大人の立場からこうする方がいいという迫り方は本人の納得を得ることは難しく、何ら生産的ではありません。基本は「好きこそものの上手なれ」ということで、好きであってこそ、本人も主体的になれ、学習効果もあるものです。

◆中学1年生の教科学習は「国語」「数学」「外国語」「社会」「理科」の5教科が中心で、その他「保健体育」「音楽」「美術」「技術家庭」等の授業があります。そのどれもが自立した社会人になるには必要なものですが、特に「国語」「数学」「外国語」が重視されるかと思います。
 ですから、フリースクールでもそういう対応が中心になります。普段の活動はもちろんですが、学ぶ主体は自分自身であると本人が自覚し、徐々に自立学習の習慣を身に付けていくことを応援すること、それが私たちの大事な関わりです。逆に言えば、本人が幾ら能力的に優れたものを持っていても、それを自ら発揮できる力を付けなければ自立はできません。
もちろん、学校を離れてすべて自分で完結することはまだ不可能に近いですから、そこはお任せください。信頼こそは最高の励ましです。こういう形で、子どもたちは全員、自らの力を要請することによって、自力で高校進学への道を切り開いて行くようになります。
中学2年生   中学2年生は、全国の不登校の児童・生徒の割合の中で最も高い数値を示しています。つまり、現在の日本の学校教育の抱えている問題が最も集約的に現象化されているのがこの学年ということになります。
 それに加えて、中学2年生という時期は人間の一生の中でも最も惑乱の時。身体的にも精神的にも大人の領域への入り口に立ち、不安定に揺れ動く時期です。思春期特有の現象が生じます。それと同調圧力が強く個性を育てにくい日本の学校教育特有の問題とが激しくぶつかり合うことになります。そういう形で、感受性の鋭い個性の持ち主が最も影響を受けることにもなります。
 ですから、そういう自分を恥じたり否定したりすることに意味はなく、ただそのような状況の中でも自分を維持していける精神的な強さが必要になります。そういう時に、本人の気持ちに寄り添え支援できるのが親御さんや我々の役割かと思います。

◆教科学習については、1年の延長として、本格的な中学の学習内容が展開します。方程式の正確な理解の他、外国語の理解にはビデオ等の動画教材を積極的に活用したいものです(アメリカやイギリスなどで活躍している日本人学者や実業家、ジャーナリスト等を見ると、必ずしもネイティブ並みに語学が流暢ではなくとも、自分の思いを的確に表現できる人たちなのが分かります)。教科学習にもその他の活動にも、自分の伸びしろを拡げるべく最も自由に関われるのがこの時期です。
中学3年生   中学3年間で一応日本の義務教育は終わりとなります。でも、実質的には高校卒業までが日本での義務教育と考えた方がいいと思います。
 ですから、中学3年生は全員、どこの高校に進むと考えた勉強をすることになります。学校の先生の指導もそれが前提です。
 学校を離れた不登校の生徒の場合も同様で、学校には通っていなくても進路先の高校は確認しておく必要があります。具体的には、先ずは一般的に全日制の高校を選択しますが、教育委員会側で不登校の中学生のためのパレットスクールという高校が何校か用意され、それぞれ午前・午後・夕方の3部のコースを設けています。また、私立の進学校やすべり止めの高校を受験する生徒もいれば、通信制の高校やそれと連動したサポート校や技能連携校を受験する生徒もいます。それぞれ自分の希望と能力に合ったところを選ぶことです。
ただし、幾ら不登校であったとはいえ、無駄な出費は避けたいものです。「間違いのない学校選び」はとても大事です。

◆中学3年生になれば、中学校の勉強のおさらいと受験に向けた取り組みは欠かせません。学力も進路の希望もみなそれぞれ異なりますから、先ずは自分で調べてみることをお勧めします。学校案内や行事を調べて、実際に足を運んで通学の感触を自分でつかんでみたり、学校側が求めるものの準備や練習をしたりすることも欠かせません。必要であれば面接の練習や自己申告書の作成や作文の練習も行います。
 日々の学業の他にこういう練習を積み重ね、本番の入試に備えます。幸いなことに、当然と言えば当然ですが、この結果、ぱいでぃあの卒業生で高校に行きそびれたという子は一人もいません。全員進学、全員合格がぱいでぃあの当初からの変わらぬ方針です。